マインドフルネスがクラスルームに出会う時


多くの教師が子供達のアテンションと感情統制力を養う方法としてクラスルームに瞑想を取り入れている


ゴンザレス先生(Argos Gonzalez)はニューヨーク、ブロンクスの英語教師である。ゴンザレス先生は広く広げた手の平で丸い形をしたメタル製のボールを支える。彼のクラスは10代後半で黒人とヒスパニック系が半々である。彼らの多くはニューヨークでも最も貧困地域とされるところに住んでいるが、このチベットボールの瞑想のためのベルに慣れた様子だ。

「今日は感情のマインドフルネスについてです。」とゴンザレス先生は言う。「マインドフルネスとは何か覚えていますか。」生徒たちの視線を教室の後ろに貼ってある髪へと促した。そこには数週間前に行った授業内容がブレインストームされていて、マインドフルネスについての意味が書かれている。そして生徒たちは「フォーカスすること」「周りの状況に気付くこと」などと囁いている。

ゴンザレス先生は頷く。「そうです。でも、私たちの気持ち、感情、そして、それが私たちにどのように影響しているかについて気付くことも含まれます。」

ここに居住する生徒達のマインドは学校の勉強より様々な不安や心配事に覆われている。

ゴンザレス先生はベルを手に置いたまま、その日のレッスンを続けた。「今から幾つかの言葉を言います。感情をそのまま感じるわけではないけれど、その言葉は何かを連想させる言葉です。または何らかの感情を起こさせる言葉です。少し試してみましょう。」

「まず、真っ直ぐに座って。足を地面につけて。目を閉じて。」15人ほどの生徒のほとんどは彼の指示に従っている。ゴンザレス先生はボールを叩くと、リッチなメタル音が響く。クラスには静寂がうち、ベルの音が反響する。

「お腹に大きく息を吸い込んで。息を吸い込んだり吐いたりするうちに、体のどこかで呼吸が強く感じられる部分を見つけて。おそらくお腹、肺、鼻腔の何れかでしょう。みんなで10まで呼吸を数えます。」

「もし他の考えに気を取られても大丈夫。もう一度呼吸に戻って数え始めて。10まで数えられるかどうかはそんなに問題ないこと。マインドをフォーカスさせる方法です。」

これは普通の英語の授業の始まりとはいえないだろう。しかしゴンザレス先生の生徒たちはこの5分間のマインドフルネスのプラクティスに慣れている。呼吸を数える、呼吸を感じる部分にフォーカスすることから、思考、感情をビジュアル化するなどのプラクティスだ。ゴンザレス先生はアテンションを高め、思考を沈め、感情を統制する方法としてこのプラクティスを用いているのだ。

マインドフルネスは攻撃、ADHD、不安などを抱える生徒への治療としての有効手段と考えられている。

マインドフルネスのトレーニングがメンタルヘルスや幸福感に有効な手段だということを示す科学的研究は増え続け、より体系づけられてきている。「マインドフルネスは、アテンションを高め、ストレスを減じる。また、感情の統制がよりよくとれるようになり、コンパッション(思いやり)や共感力などが高まる。」

ハーバード大学とマスジェネラルホスピタル共同の脳のイメージング研究によると、マインドフルネスのトレーニングを長期に渡って行うと、アテンションや感覚を処理に関わるとされる脳の皮質領が厚くなり、加齢によるこの層の衰えを食い止めることができるということが明らかになった。マインドフルネスは成人の心理療法に有効とされるだけでなく、子供や青年期の攻撃、ADHDをはじめ、不安などのメンタルヘルスの問題にも有効とされている。(マインドフルネスだけで、その他のセラピーに変わる手段として十分かどうかはもう少し検討する必要がある。昨年の47件の無作為に行われた臨床研究の報告がThe Journal of the American Medical Associationに掲載され、マインドフルネスは薬による治療などの他の治療より有効とは言い切れないとされている。)

このような研究基盤の強力さと、支持する声の高まりに後押しされ、マインドフルネスはさらに勢いづいている。今や学校まで拡がりを見せ、生徒の幸福感に作用する潜在性が期待されている。2010年のJohns Hopkins Studyによると、アメリカ人青年の4/1はメンタル疾患を患っているというのだ。

教育現場へのマインドフルネス導入の試みの初めての大きな動きとして、2007年イギリスにおいて、国内全ての学級でマインドフルネスのレッスンがシリーズとして実施された。それ以降、この動きへの関心は高まりを見せている。今年7月に、オクスフォード大学の研究チームが、来年、マインドフルネス教育に1000万ドルを費やし、7年に渡る大規模な研究を実施すると発表した。

アメリカでも様々なイニシアティブが生まれている。草の根運動から生まれたプログラムで、教師にマインドフルネス教育を施し、独自のカリキュラムを開発している。

マインドフルネス教育が適応されるのは、ゴンザレス先生が働くような、生徒の心理的、家庭的環境が不安定な学校ばかりではない。ミドルセックススクールは、マサチューセッツ州にある名門の全寮制の学校で、一年生に対してマインドフルネスのコースを義務付けている。コースを受講した生徒のうち97%がこのコースをお薦めしたいと回答しており、その効果として睡眠の改善、ストレスの減少、勉強への集中力の高まりなどを挙げた。

教育改革者は長い間、感情の乱れと人生の見通しの低さは深く関係していると主張してきた。タフ氏(Paul Tough)は、「How Children Succeed」という著書のなかで、人生の早い段階でのストレスは心理的、神経学的に無数のネガティブな結果をもたらすと主張している。特に自制心の欠如、前頭前野の発達の遅れが指摘されている。アメリカの教育システムでは知能に重点が置かれている。IQスコアや算数などの学力にフォーカスしており、知能に関係のない、しかし知能と同等に重要な側面の発達を軽視している。この種の能力に、マインドの側面が含まれるが、量的に示すことが難しい。これらは、良い性格の基盤、レジリアンス(精神的強さ)、長期的な人生の目標などである。マインドフルネスが働きかけるのはこのようなマインドの側面なのだ。


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